BEATS AND LOVE

スピリチュアリティー、根本の癒し、ヒップホップ音楽とライフスタイルや考えあれこれ

見習い天使と共感力のお話

見習い天使は、言いました。

「人間になって戻ってくる魂は、
私にはとても不思議なきらめきを放っているように見えます。
それは、私がここでは見たことのない色です。どうしてなのでしょうか。」

より熟達した天使が、こたえました。

「彼らは、私たちとは違った構造で世界をみることを選んだんだ。
それを体験して、新しい色を携えて戻ってくる。」

見習い天使は、人間たちの構造についてもっと深く知りたいと思いました。


熟達した天使は、こう言いました。

「きみに、共感力をあげましょう。
これを持って、人間界を飛んできてごらんなさい。
ただし、絶対に、人間の人生に介入しないように。
きみが何を感じたとしても、決して手を出さず、見るだけにすること。」

「はい。」

見習い天使は、与えられた共感力を胸に、
人間界へと入っていきました。


とても長かったようでも、短かったようでもあります。
天使には時がありませんから、
どのくらいの間そこにいたのかはわかりません。


天使は、世界中の、あらゆる人の気持ちを感じました。
感情というものを、初めて体験しました。
それは、激しく、生命にあふれていました。

どの人にも共感できる天使は、
たびたびその場に立ち止まらなければなりませんでした。

あまりに大きなかなしみに、刺すような痛みを感じたり、
あまりに大きなよろこびに、我を忘れて見入ったりしていたからです。


滞ってしまった感情、渦になった感情に翻弄され、
自らを、ときには仲間を傷つけている人たちも見ました。

そういうとき、天使は思わず手をのばしかけて、ぐっとこらえました。
そこにいると、その中にのまれてしまいそうでした。

ですから、天使は涙を流したまま、ただ視点を切り換えました。
そうすると彼らのコアが見え、複雑に絡み合った彼らの道、
その奥にある「消えることのない光」を確認することができました。


そして息をととのえて、その場を去りました。


天使が途中で気づいたのは、
これだけたくさんの種類の感情が飛び交っているのに、
よく観察していると、それらはすべて「愛」の変形であるということでした。

この複雑なゲームに、天使は感心しました。
ただ圧倒されていたときにはわからなかったのですが、
さまざまな形のホログラムのようにぼうっと浮かび上がる「感情」には
必ず「芯」があり、それが愛なのでした。

宙に浮かんでいる「感情」をうまく手でつかまえると、
まわりを覆っていたものが雪のようにとけて、すうっと消えていきます。
手のひらには一片の愛だけが残るのでした。


天使は次々と感情を手でつかまえて遊びました。
そうやってみると、感情はとてもきれいでした。
どれもひとつひとつ形が違い、みずからの色彩を変えて光っていました。

この遊びを覚えてから、天使は遠く飛び去って、
人間界全体を映す視点に切り換えてみました。


そこに現れたのは、
無数の色がきらきらと交錯し合うそれはそれは美しい場所、
複雑に絡み合いながらパターンを織り成す図形でした。

「そろそろ戻る時分だ」

天使はつぶやいて、もときた場所へと帰ってゆきました。


「どうだった?」
熟達した天使はたずねました。

見習い天使はこたえました。

「見たことのないものをたくさん見ました。
こことはあまりに違う表現の…それでもやはり天国でした。」


見習い天使の肩には、ここにはない様々な色のかけらがついて、
今もちかちかと輝いていました。



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