ある朝、男は目を覚ました。
魂の、慟哭の中で。
魂の痛みがじかにのぼる。
男はうめく。
何をしたのでもない。
男は、善人であった。
少なくとも、そうあろうと努めた。
やさしくあろうとした。
正直であろうとした。
そしてまた、順応しようとした。
こたえようとした。
男の思う、世界に。
しかし、魂は知っていた。
もうひとつの目で、見ていた。
洗いざらい。
男は、見せられた。
さまざまな場面を。容赦なく。
努めていた自分、と、
その底にある生の自分とを。
どこから見ていたのだろう。
どうやって見たのだろう。
あるかけらが、冷淡に言った。
「あなた、本当はそうではないでしょう。」
人生のあらゆる場面、
あらゆる些細な記憶が洗われ、明かされてゆく。
「本当は、そう思っていなかった。」
「本当は、そうしたくなかったんだ。」
でも、そうするよりほかに何ができただろう?
それらが、今の自分を織り成している。
重なり合って、現在の私を形成している。
しかし、この痛みはどうだろう。
なぜ?誰が言うのだ。
「おまえは、ずれている」と。
男は、頭を抱えて、長いことうずくまっていた。
無限の穴が体のどこかにあって、
そこから外に向かって風が吹き上げるように――
痛みと嗚咽はいくらでも吐き出される。
無限は、怒らない。
無限は、いましめない。
しかし、怒っているのは誰だ。
絞り出すようにうめいて、嘆いているのは誰だ。
ごく自然に、そのままで――
引き返せない朝に、男は入っていった。
そっと、ぬるい水よりもっとやわらかい質感の帯へ、
境界もなく、浸透していくように。
☆スピリチュアルカウンセリング☆