BEATS AND LOVE

スピリチュアリティー、根本の癒し、ヒップホップ音楽とライフスタイルや考えあれこれ

男はつらいよ~ギャングスタ・ラップの楽しみ方、Nate Dogg編~

今回は、
男はつらいよギャングスタ・ラップの楽しみ方、Nate Dogg(ネイト・ドッグ)編~」
と題して、こんな風にギャングスタ・ラップを楽しむのも面白いよ!という私なりの見方をご紹介します。

☆☆☆

小学生の頃の冬休み。
お正月に父が、私と妹を映画館に連れて行ってくれたことがあった――

映画館という非日常の空間に父と3人で出かけることは嬉しくも、(母はたぶん家で休んでいたのだろう、)子供心には「○○アニメ祭り」とか、子供向けの映画に期待を寄せる部分もあった。

でも……父のチョイスは、「フーテンの寅さん」
男はつらいよ』と『釣りバカ日誌』の2本立てだったのだ。

今考えれば、とてもお得である。
人気作を一気に2本見られるなんて。お正月感あふれる豪華さではないか。

とはいえ当時子供だった私たちは、アニメ映画のにぎわいを横目で見つつ、半ばがっかりする気持ちも持って、父と一緒に「寅さん」を見に映画館へ入った。

ところが! 見終わった頃には、
「楽しかった!」
「寅さんと釣りバカを見れて、本当によかった…!」
と、子供でもすっかり笑顔でそう思えたのだから、作品の持つ力は偉大である。

家で両親が「金曜ロードショー」などで「男はつらいよ」を見ているときにも、つい、つられて一緒に見てしまうことが多かった。

見ると、やはり、面白いのだ。
ストーリーが毎回似たパターンの運びになるとわかっていても、やっぱり面白い。

そして毎回、寅次郎の不器用さを応援したい気持ちになってしまう。

☆☆☆

……今回のタイトルには、『男はつらいよ』の映画への思い出、リスペクトの気持ちも込めましたが、同時にこの記事で書きたい内容として、
私は前々から、
アメリカのラップ、特にギャングスタ・ラップと一部のR&Bは、日本の古き良き「演歌」に近いものがあるのではないか
…と思っていたので、それを反映させました。


演歌には、よく歌われるテーマや、決まり文句が存在しますよね。

たとえばこぶしをきかせ、情緒たっぷりに「男気」や「女心」、「未練」を歌ったり、歌手ごとに「この人は、漁師の歌が人気」などの定番があったり。

この、お定まりの芸風があって、「それが味なんだよ!」と言えるところが、ギャングスタ・ラップにも通じるのです。

以前の記事で、そういったギャングスタ・ラップの定番の表現について、私はお家芸と表現しました。

たとえば、聞き手は、スヌープ(Snoop Dogg)が、あのまろやかな声で「ビヤッチ!」と言うのを聞きたいのです。それを楽しみにしているのです。
※ビヤッチ=ビッチ

曲中に、あたかもビートのように「バンバン!」とピストルの音が入っているからといって、何も本気で撃ち合い、殺し合いを奨励しているわけではありません。そんなことはわかりますよね!(笑) 

つまり、ギャングスタ・ラップでよく使われる言葉の表現や、ときに暴力的とも取られる世界観も、定番のスタイルや持ち味の一つで、そういう遊び、音楽・表現の形と言えます。

もちろんその根底には、そのようなスタイルが出来上がるまでの流れとして、実際生きるのにハードな環境があったという背景があって、
そのことにただ負けてしまったなら、「絶望」して終わってしまいそうな要素すらも、ひとつの芸術、人々に憧れられるようなスタイルにして昇華してしまった
…というすごい生命力、クリエイティビティーの歴史があるのです。
ちょっとまじめに語るならばね。

こんな視点で眺めてみると、ギャングスタ・ラップの中にふと垣間見える「優しさ」、「愛」、「虚勢の背後に見えるもの」、「弱音」などの部分に気づくようになり、いとおしくなります。


たとえば今回フィーチャーする、ネイト・ドッグ(Nate Dogg)
すでに過去記事でも何度か紹介しました。そのひとつは、こちらですね。↓

beats-and-love.hatenablog.com

ネイト・ドッグはラッパーではなくシンガーでした。※この表現については別の記事で補足説明します。
2011年に亡くなりましたが、その存在、音楽ともに今でも愛されています。

ネイト・ドッグは、ある時期から「客演王」と呼ばれるくらい、
たくさんのラッパーの曲にフィーチャリングで参加しており、一時期は
ラップ+ネイトドッグの歌=必ずヒット
という図式が信じられそうだったくらいです。

その一方で、私はときどき、
ネイト・ドッグ個人の本当に創りたい音楽はどんなだったのかな…
と思いを馳せることがあります。

そう考えたときに、以前もご紹介した2枚組のアルバム、「G-Funk Classics vol. 1&2」には、彼の音楽の真髄が詰まっているように思えるのです。


たとえば、私がヘビロテしている「Stone Cold」。

Stone Cold--Nate Dogg 

 

iTunesではこちら↓ 

Stone Cold

Stone Cold

  • ネイト・ドッグ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

ストーンコールド・ベビ♪ ストーンコールド・ベビ♪
の繰り返しが耳に残る、ノリの良いチューンですが、

この「Stone Cold」の意味を、完璧にかっこいいクールなギャングスタ
「冷酷で無情な」という意味で聞くだけではなく…

ネイトドッグの歌声、節、曲全体を深く味わっていると、不思議と、
「世知辛いね…」
と、言っているようにも聞こえてくるのです。

リリック(歌詞)をよく聞いてみると、途中まではラップによくありがちな「オラオラ系」、俺をなめんなよ的なすごさのアピールの内容になっているのですが、

最後の方では、私なりに訳すと、

「俺の金を奪おうとするやつもいるし
俺を怒らせようとしてくるアホもいる
近頃じゃ、笑うのもなんだか難しいよな
これまでいなかったような新しい友達がわんさかできたよ」

というヴァースがあり、有名人ならではの苦労が忍ばれる雰囲気になっています。
※英語のlyricsはこちら→NATE DOGG LYRICS - Stone Cold

そんなことを想像しながら聞いていると、
「冷徹」で「石のように冷たい」、エモーションレスなかっこいいギャングスタというイメージの奥に、
実はリアルなハートを持つネイトドッグが、
「世知辛いねぇ…」
と、つぶやいているようにも聞こえきて、

泣けてくるねぇ…と、「Stone Cold」も哀愁漂う、情緒的な響きになってくるのです。

ノリのいい、パーティー調のフック(サビ)も、
(つらいこともある人生だけど、)今夜はただ楽しみたいんだ、盛り上がろうぜ!
と呼びかけているという、陰影のある明るさになってくるんですね。


また、同アルバムには、「Scared of Love」など、ストレートにセンシティブな心を表現した歌も含まれています。

Scared of Love--Nate Dogg feat. Danny "Butch" Means

 

 俺はただ、愛におびえている男なんだ…
と歌っていて、しみじみしてしまいますね。

iTunesではこちら↓ 

Scared of Love (feat. Danny

Scared of Love (feat. Danny "Butch" Means)

  • ネイト・ドッグ
  • エスト・コースト・ ラップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

ネイト・ドッグのいとこで今も活躍しているラッパー、スヌープ・ドッグも、
私がずいぶん前に偶然見たアメリカの番組の中で、
学生時代からのつきあいの奥さまと「結婚式」を挙げ直していて、

その番組のインタビューの中では、
「女性に、どうやって優しく接したらいいのか、わからなかったんだ…(そうしたかったけどできなかった)」
と、涙をこぼしていました。

ああ、男はつらいよ


虚勢を張って、強がって、マッチョな精神の持ち主に見せていても、
心の中まで全部そんな風にはなれないから。

そのスタイル、芸風を守り続けるラッパーたちの曲を楽しみつつも、
彼らの心の内側にも思いを馳せると、
また違った意味が浸透してきたり、別な角度から作品を味わえたりしますよ!

☆今回取り上げたアルバムのCDはこちら↓  

G Funk Classics  1&2

G Funk Classics 1&2

 

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