BEATS AND LOVE

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ラップとR&Bに表れるキャラの違いと【解説編】Paper, Scissors, Rock (Chris Brown feat. Timbaland and Big Sean)の歌詞翻訳

乗りかかった船とはこのことで!?
前回「Paper, Scissors, Rock (Chris Brown feat. Timbaland and Big Sean)の歌詞翻訳」を載せたら解説もしたくてたまらなくなったので、こちらで。

それというのも、以前「翻訳の不自由さと面白さについて語ってみよう」という記事や複数の記事でふれたことがあるように、翻訳という作業では、元の歌詞にある含蓄を表現することが限定されてしまい、伝えきれない部分があるからです。

beats-and-love.hatenablog.com

それと同時に、ちょうど最近昔のR&Bを聴き直していたことから実感したポイントもあって、アメリカの「ラップ」と「R&B」に表れる男性のキャラクター表現の違いについても語りたいと思います!

翻訳しきれないあれこれを解説する

まず、前回載せたクリス・ブラウン feat.ティンバランドビッグ・ショーンの「Paper, Scissors, Rock」の訳詞ですが、はっきり言って未完です。
何度かいじってみたけど、自分では満足していません。
歌詞の翻訳って、すごく面白いけど、すごく難しいですよね。
それは英語の難易度の問題ではなく、曲の持つ世界を壊さず「日本語」という別のフォームに当てはめることがお悩みポイントになるのです。

※こちらの記事を参照しながら、お読みくださいね↓

beats-and-love.hatenablog.com

特に今回、一番頭を悩ませてくれたのが、クリスの歌詞で繰り返される「throw it away」の翻訳でした。
そう、意外にも、スラングなどの特殊表現より、ごくありきたりなこの語の方がこの曲の歌詞で存在感を持つ言葉であり、うまく訳すのが本当に難しい語でもありました。
それもあわせて、曲の世界観を語りながら、ポイントとなる英語表現を解説します。

思い通りにいかない恋愛と、未練を持つ男たち

まず、曲を訳しながら気づいたのは、激しい語調とは裏腹に「とっても悲しい。どうして俺に対して真剣じゃないの?」という気持ちがこの曲のメッセージになっているということです。
クリスが歌っている歌詞と、コミカルながらもはっきり主張を述べているビッグ・ショーンのリリックでは、それがわかりやすいですよね。
微妙なのはティンバランドのヴァースで、こちらは「お前に、もううんざり」感も漂っているので、一見、彼の方が「別れたい男」なのかな?とも思ってしまいます。
ですが、よく聴くとやはりティンバランドのヴァースでも、「俺の価値に気づけよな」ということが色々な形で述べられていて、相手への未練は断ち切れていないようだという含蓄が感じられます。

この恋愛に、胸を躍らせていた

ティンバランドが冒頭で「膨らんだ心にペンを突き立てて破裂させて……」と表現しているように、また、クリスの歌で「you paper scissors rock my world」と表現しているように(※rock my worldは最高の気分とか、相手に夢中という表現)この歌は、恋愛でそれまで最高の気持ちを味わっていた男の心を描写しています。

ところが、そう思っていたのは自分だけ?で、相手は別れを告げようとしているのです。
それどころか、自分の地位やお金や性的魅力やあれこれを利用していただけで、結局、遊ばれていたみたい……。
恋で最高になっていた気持ちがぺしゃんこになった。
そんな様子が見て取れる歌詞なのですね。

ベースとしてこのことがわかると彼らの「俺様節」も、とてもけなげに思えてしまいます。心は泣いているんだよっ!

なんでも買ってあげるさ。君を夢見心地にさせてあげるさ。

ここで踏まえていただきたいのが、ラップにしろ、R&Bにしろ、ブラックミュージックの世界でよく出てくる「ステレオタイプ」な男女の関係についてです。
男性は、自分の心をとろけさせるような最高にセクシーなbaby girl(※愛しい彼女を呼ぶときの呼び方)に、お金や宝石、自分の性的魅力などで尽くします。

ところが、その女性が自分の期待にこたえてくれなかったり、スターであることなどの自分のステータスや、金銭、物質目的の女だと判断されると、一転して彼女は「Bitch」や「Hoe」と呼ばれます(笑)特にラップではそうです。

この歌でもそういった価値観がベースにあるということに、思いを馳せてみてください。

訳すのが難しかった「throw it away」は、もてあそばれた俺の心

そして、クリスの歌詞の部分で、私が訳すのに大変苦労している(納得していないので現在形ですよ)、「throw it away」という言葉は、以下のような流れで出てきます。
簡単に説明してしまうと、
君は、僕を最高の気分にさせて、僕の心を揺さぶって、そして捨てるんだね、と。
嘆き、恨み言を表現しているわけなんですね。

それに先がけて、俺みたいな男は他にいないよ、ということを、「Girl, I'm the only one like me on the planet.」そして「It don't take rocket science to understand it.」と表現しています。

「rocket science」というのは、ロケットの科学のような難しいこと、を意味する英語表現で、rocket scienceじゃないんだからさ、という言い回しは、「そんなに難しいことじゃないでしょ。簡単なことでしょ」ということを意味しています。

それなのに、彼女は自分の価値をわかっていなくて、彼女に夢中だった自分の心を、ポイと「捨てちゃう」わけです。

「throw away」には「捨てる」という意味もあるし、「浪費する、ムダにする」という意味や「棒に振る」という意味もあります。
そして「throw it away」とクリスが歌っている箇所の「it」は、彼の「heart」を指しています。

そのため、彼の彼女への思いや「心」を踏みにじってもてあそんだ、無為に浪費した、などの意味がこの語に込められていて、そのためにとっても、日本語としてどれを使うか、訳し方に悩んでしまうのです。

ただ「捨てる」と訳すと、それらの含蓄は伝わらない気がするし、
「ポイ捨て」だと、なんだかタバコのポイ捨てみたいだし(笑)
「無駄にする」だと、ニュアンスがちょっとズレてしまう気がするし、
「踏みにじる」だとthrow awayの言葉の意味から出過ぎていたり、表現としてちょっと、歌の雰囲気より軟弱になり過ぎてしまう感じがする。

そんなわけで、「ああ、英語で汲み取っている throw it awayのニュアンスを日本語で表すのに、これだけ悩むなんて……」と、翻訳の難しさを再認識いたしました。

ティンバランドのヴァースに含まれている意味

それから、独自の世界を展開してくれているのはティンバランドです。
彼のヴァースにも悩まされました。

彼の2番目のヴァースで、彼女を「お買い上げした場所に連れ戻す」ということを歌っているのですが、ここには、実は複数の意味が込められています。

たとえば、生活水準やステータス的なことを暗示する部分。
お前は俺のおかげで今の贅沢ができてるのだから、俺と別れたら元の生活に戻ってしまうよ、ということを語りかけているのが一点。
自分なしではお前は大した女じゃないよ、ということも主張しているわけです。
それを思い出せよ、と恩を着せているわけですね。

ヴァースに含まれている「お金やら宝石やら、あれこれ全部返してもらわないと」という部分は、お前にどれだけ費やしてやったか、という「これだけ尽くしたのに、この気持ちに報いてくれないのか」という嘆きでもあるのです。

さらにティンバランドのリリックで悩んだ上に未解決なのが「boat」の出てくるフレーズで、彼女を「買われた場所に返す」というフレーズの流れから、どう捉えていいか悩みました。
たとえば、boatという語が出てくる言い回しに「fresh off the boat(船から降りたばかりという表現で、海外から来た移民を指す。ネガティブな意味で使われることもあり注意が必要。)」があることを考えてみたりもしました。

ただ、この歌でそこまでシビアな表現を出しているかどうかは疑問で、それよりはむしろ、「リッチさ」を意味する「ボート」、つまりお金持ちが所有しているボートと考える方がいいのかな?と悩みました。ラップのMVなどでよく富裕の象徴として出てくる、ボートです。
あるいは、大きな高級車のことも、スラングboatと呼びます。

でも、そこからは「お前がジャンプしているのを見せてもらう」という次の展開に繋がらず、それを考えるとボートによじ登ってジャンプするというフレーズは、セックスの騎乗位を暗示するような性的な意味で使っているのかな?とも考えました。(→これが正解でした!後日、判明したので追記)

このようにティンバランドのフレーズは色々悩ませてくれましたが、残念ながらgeniusサイトを始め、どこにもその解説は出ていないので、まだ結論は出ていません。

R&Bでの男性は懇願系、ラップでの男性は挑発系

今回のクリス・ブラウンの歌は一応R&Bではあるのですが、ラップが入っている点で、どちらかというと「ラップ寄り」の内容として考察すると、R&Bで表現される男性の姿と、ラップで表現される男性の姿の違いを興味深く観察することができます。

面白いことに、同じブラックミュージックでありながら、R&Bで表現される男性の姿は多くが「懇願系」で、ラップでは「挑発系(俺様系)」なのです。

もちろんそうでない場合もありますが、私が知っている多くの歌での傾向からお話しします。

R&Bでの男性は、とてもスゥイートな一面を見せます。
down on bended knee(ひざまずく)ことをして、
「僕に悪いところがあったら直すよ、ベイビー。去るなんて言わないでよ、何でもするから、どうかやり直してよ」と、語りかけるのです。

一方で、その本質がラップでは、「俺の真価をわかってねーな。ふざけるなよ、ビッチ」と、挑発系の表現に変わりがちです。
嘆いている根本は一緒なのですが、強気の側面でアプローチするのです。
こんな俺を逃すお前はバカだ、誰を相手にしているか、まるでわかっていないようだな……と挑発的に語りかけ、
ひいては、「どうせ俺の金とファック目当てなんだろ」との発想にも、帰結してしまいがち。

この、まるで「コインの裏表」みたいなキャラの存在を、私は面白いなと思うのです。
ある見方をすれば、同一の文化の中での、内にある女性性(R&Bの表現)と男性性(ラップの表現)をオーバーに、象徴的に存在させているとも言えますね。

リル・ウェインの「Hotline Bling」に見る、悲しみの転化

これと同じものが垣間見える曲として、Lil Wayneの「Hotline Bling」があります。
(Mixtape「No Ceilings 2」に収録。)

恐らくこの曲は、オリジナルのDrakeの「Hotline Bling」が有名だと思うのですが、Lil Wayneのカバーの方が私は味があって好きです。 

 

実はこの曲は若干、Lil Wayneのノンフィクションっぽい体験が感じられる曲なんです。

というのも、歌詞の通りに、彼は刑務所に入っているとき、当時つきあっていた彼女の存在を心の支えにしていたのですが、その彼女が、あろうことか彼の大事な後輩的存在のDrakeと過去に関係を持っていたことが刑務所にいる間にわかったんですね。

私の感覚だと「過去のことなんだから別にいいじゃない」と思わなくもないのですが、これがLil Wayneには相当ショックだったようで。

Drakeからも彼女からもその旨聞かされていなかったことがショックだったのか、いくら過去でも親しい人間と関係を持っていたこと自体が嫌なのか、よくわかりませんが。

後年のインタビューを見ても、その話題では泣きそうな顔になっているほど、Lil Wayneがこの出来事に傷心していたことが見て取れます。
元々その女性とはケンカが多くて、うまくいっているとは言えない関係だったようですが。

Lil Wayne自身、過去の事実を見れば同時進行で別々の女性との間に子どもを設けたりしていたこともある人なので、そんなことにこだわるとは「えーーー!」と意外に思いますが、彼なりの感性があるのでしょうね。

そんな実体験を暗示するこの歌では、彼女が「変わってしまった」と一通り嘆いた後、最後に「気を失うまでファックしてやる」というリリックで終わるのです。

Lil Wayne「Hotline Bling」の歌詞はこちら↓

genius.com

……なぜそうなる。
それもまた、「ええええええ!」なのですよね。

でも、ラップの世界ではそのように「自分の力を誇示」しながら思いを表現しているパターンがとても多いのです。マッチョなキャラであり続けるのがお約束だから。

ののしったり、挑発したりしてるけど、その奥には生身の感情や愛情表現がある、と。

私はこういったラップの世界を、ときどき「プロレスと似てるな」と思ったりもします。
私はプロレスファンじゃないし詳しくもないので、間違っていたら申し訳ないのですが、プロレスは完全に本気の格闘技というよりは、ある程度、誇大的な表現があったり、ショーみたいな要素がありますよね。 

それが、ラップの世界と似ているなーと、よく思ってしまうのです。

彼らのキャラが好きなので、これからも追い続けるよ

私はそんなラップ及びR&Bの世界がどうにも大好きでして、そこで表現されるキャラクターに愛情をおぼえるのです。

その上、「言葉」に取り組んであれこれすることも結局好きなので、英語のリリックの味わいはもとより、こうしてわざわざ訳してみたりして、考えたり説明したりすることにもよろこびを見出します。その作業自体が楽しいんですよね。

私は今は翻訳専門の仕事はしていませんが、この趣味は、きっと続いてしまうのだろうと思います。サガ?(笑)

これからも、ブログという場を利用して何かしらシェアすると思いますので、同志の方は楽しんでいただければ幸いです。


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