生きていてふと、「百億光年分の孤独」とでもいうような、
果てしない感覚と向き合うことがある。
それは、この地球という景色や、そこにまつわる色々なものごと、
ありとあらゆるものすべてが、愛しいままで、
読み終わった本をぱたん、と閉じるときのような、
静かで遠いまなざし。
私は、もしかしたら、この感覚は創造の源に関係するのかもしれないと思います。
☆☆☆
完全に自分ひとりしか存在していなかったら、
孤独はありません。
神というものが「すべて」ならば、神に孤独はないでしょう。
自分と、自分でないもの
という関係ができてはじめて、孤独を感じることができます。
心の距離を、体験することができるのです。
私が全体でひとつの自分だったら、
バラエティーをつくりたい、それを目にしたい、と思う気がします。
それで、そういうものを創れば、「交流」が生まれます。
交流すること！
自分しかいなければ、それも実現はしなかったのです。
自分の創造した、バラエティーに富んだ存在ひとつひとつに、
それぞれの自発性をプログラミングすれば、
「私」の中にある様々な要素が、
ありとあらゆる形で「私」の材料を使って、
「組み合わせ」を創るところを見ることができます。
私は、私の中で、起こり得る「可能性」すべてを起こしてみるという、
遊びができるわけです。
プログラミングと書きましたが、「私」がそうしてみたい、と思ったときに、
“そうしてみたい私”という意欲、その意思が、私の創造したバラエティーのすべてに、
自動的に組み込まれていくのでしょう。ホログラフィックに。
それはすべて私の分身だから。
私は、「私」を細分化した、“私たち”の意識を見ます。
私たちの意識は、私の意思を内包したまま、さまざまな体験を開始します。
それもすべて私の中にある創造に他ならないのですが、
私の中で細分化した「私たち」は、私の中にある材料を使いながら、
すでに存在しているあらゆる可能性と「出会う」ことをします。
やがて、「私であるということを忘れてみる」という、ひとつの可能性において、
“私たち”は、さらに細分化していくことが可能になりました。
こうした舞台の中で、もとの「私」の意識に戻りたいと思ったら、
反対のプロセスをさかのぼればいいだけです。
「私」であることを思い出すだけです。
すると、これはプロセスの一部で生じた、自作自演の世界だったことを思い出します。
自分同士なのだけど、まるで自分じゃないという感覚ってどうだろう。
お互いの心の源までもが、別々のものと信じられるのはどんな感じだろう。
心の中身が互いにわからなくて、それは繋がってなどいなくって、
別々であると思えるんだ。面白そうじゃない？
それはいい！
この体験は壮大なジョークであり、わくわくする可能性でした。
完全に分かれた心を持つことができない“私たち”は、
そんな遊びが可能になるように、共通の合意に基づいて、夢を見ることにしました。
意識のレベルをどんどん下げて、たとえるなら、目覚めた状態ではなく、
「眠り」の意識にフォーカスしてみたのです。
目覚めた状態では無理、そんな遊びはすぐ「ばれてしまう」。
夢の中でしかそんな遊びは可能にならないから。
これは、アバターゲームのような体験です。
「私たち」と言える、神のひとつの心を共有したスピリットのことを、
仮に神（A）の創造した「アバターA」と呼べるのだとしたら、
この夢の自己は、そのアバターAの投影した（夢みた）、「アバターa」…なのです。
このアバターa（現在の人間体験の私たち）は、眠ったまま創造をしました。
「分離した心という信念（夢）」を受け入れ、分離した現実を見ています。
すると、くっきりした境目をもつ、物質世界を体験できます。
（神、スピリット、私たち人間…の世界は、重なって存在しています。
それらはすべて心の中にあり、外に投影されているだけだからです。）
そうやって「私」は、自分の意識をうまくだますことに成功しました。
偽装の世界の体験が、あたかもリアルに、存在するように感じられました。
「眠り」の意識の私（自我）は、大きな「私」であることを自分に上手に隠します。
夢の設定の中の小さい自分（主人公）であるという視点に限定することで、
そこへフォーカスすることに成功しているのです。
その働きによって、私たちは「自分ではないもの」という感覚を体験することができ、
様々な「独自の夢」を見ることも可能になりました。
どんどん細かくなる（分裂が複雑化していく）ことをゆるしました。
これはなかなか興味深いゲームでした。
「眠り」の意識は深く、まどろんだまま思い出さない自己は、
夢の中でクリエイティビティーあふれる、様々な分離の現実をつくりました。
それまで体験することのなかった、新しい概念もありました。
こんなにも分離できるのか…そして、対立するというのはこういうことか…と、
この世界で起こる「絡まり」と「歪み」に、
目覚めた意識のまま眺めている視点の私たちは驚嘆しました。
そうやって複雑化した迷路の中の自己であっても、色々な可能性が無数にある中で、
あるとき「ピン！」とくる一致の体験をすると、
それは「忘れる」前の私、自分が隠した私の、元々の自分に戻ることなのですが、
「思い出す」ことで、次々と融合する力、
ばらばらに見えたものが見事に一個につながる奇跡を体験することに、感動しました。
そのとき、「私たち」スピリットの試みた芸術作品、
「忘れた中で、再融合する」という夢が完成します。
☆☆☆
「私を思い出す」ためには、
自分にかけられた「魔法」をとかなくっちゃいけない。
「魔法」って、どんなもの？
それは、「あなたはこういう者である」という、
外（忘れた意識が映しだす夢）から着せられた信念なんだ。
あなたは生物の分類では人間で、
それはこういう体を持つもので、
性別は男で（女で）、年齢はいくつで、
こういう外見で、こういう性格で、
こんな「義務」があって…etc.
外を「現実」だと思う私たちは、自分を、それに合わせて創ってしまう。
型にお米をつめて押し出したおにぎりみたいに（笑）
いつのまにかプロセスが逆になってしまったんだ。
私たちが外を創っていることを忘れるということは、
そういうことなんだ。与えられた情報を信じ込んでしまうんだ。
外の現実を現実だと信じるようになると、それがベースになると、
意識的に考えているつもりはなくとも、私たちはつながっているから、
「忘れた意識」同士の反応があり、
「忘れた意識」は「忘れた意識」と手を結び、
心でそれを読み合っては、ぽんっと「それに合わせた自分」を押し出してしまうんだ。
内側にある自分を歪めて、無自覚に。
そうして、「分離の夢」は維持される。
「本当の自分」はあなた自身の中にしかない。
インスピレーションは、あなたの心の奥からやってくる。
あなたは自動的に、怠惰に同じ自分を「創る」のではなく、
自身の内的な現実に注意を払うことができる。
ただ、自分をチューニングするんだ。
「本当の自分」の示す方に、自分を合わせるんだ。
合わせるといってもそれは自分なのだから、
素の自分でいる、一番楽な自分でいる、という感覚になる。
あなた自身であること、そしてそこに、何も足さないこと。
夢の中で夢と忘れている自己は、「本当の自分」におびえているがゆえに、こう言う、
「とんでもないよ！そんなものを見せたら、私の世界は不調和だらけになってしまう！」
そして自分の表現を我慢する。感じていることを隠す。
自分の思う外の世界に、合わせる。
自分の思う「ポジティブ」を、実現しようとする。
一方で、真実の自己はこう言う、
「開いて、流して、滞りをなくしてごらん。
自分でつくった制限バンドを、自分に巻くのをやめてごらん。
ほとばしるものを抑えつけることは、興味深い試みだけど、
そこで生まれる苦しみすら、一緒に抱擁しているけれど、
生のままの、やわらかいあなたが、自分を罰するのをやめるとき、
あなたは、そう私は、一緒に創っている夢を明るく照らすことができるんだよ。」
☆☆☆
「百億光年の孤独」と表現した感覚は、地球でいう「分離したさみしさ」ではなく、
こうした現実をなつかしく見ている意識の感覚のような気がします。
このシリーズの終わりを知っていて、
何度も読み返した愛しい本の、１ページ１ページをめくるのが、
だんだん終わりに近づいていくのが、なんだか惜しいかのように。
ただひとりである「心」の中で、
静かな美しさが波のように押しては引いていき、
ときには演奏するものに、
ときには聴くものになりながら、
私たちはまた、創造をすると知っている。
創造のもつ、止むことのない性質を、私はそう感じているのかもしれないのです。
それでは、また次回お会いしましょう！
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